本日の朝6時、福島県沖にて地震がありました。
被害が少しでもないよう、ご無事をお祈りいたします。
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国際アンデルセン賞とは児童文学の
ノーベル賞と言われているもので
累計133万部 「守り人シリーズ」の
作家・上橋菜穂子氏が2014年に受賞されました。
また同シリーズは去年の年末NHKで3年間にわたる大河ファンタジーとして放送が始まったのでご存じの方も多いかもしれません。
呪術がまだ残る世界で大陸の4つの大きな国を中心に目に見える人間の世界(サグ)と目に見えない精霊の世界(ナユグ)が交差して世界を紡ぐ全10巻ある壮大なファンタジーです。
主人公は新ヨゴ国の王子チャグム、と、
国々をまたがって用心棒稼業に精を出すバルサという女用心棒が各巻ごとに交互に
小説の主人公になり物語を織り成していきます。
その第2巻は「闇の守り人」は児童文学でありながら大人に大人気の巻となっています。
(ちなみに子どもに大人気なのは第1巻、
チャグムとバルサが共に冒険する精霊の守り人)
確かにわたしも全シリーズ読みましたが、
「闇の守り人」が一番好きです。
なぜ大人がぐっとくるか。
子どもから親になった時にはじめて親の愛を理解したことを思い出した、
というような感想が多いのですが、
実はこの物語のクライマックスが心理セラピーと非常に酷似しているのです。
なので、わたしは読みながら擬似心理セラピー的に共鳴している要素もあるのではないかと推測しています。
ここからはあらすじ、
ネタバレとなるので、ご注意ください。
女用心棒バルサの故郷は山岳地帯で
わずかに放牧するしか生きる糧を
見出せないような貧しい国の出です。
父は王の専属の医師だったのですが、
陰険な王の陰謀に巻き込まれ命を狙われてしまいます。自分はどうにもならなくとも
妻の忘れ形見である娘だけは、と5歳のバルサを親友に託します。親友の名はジグロ、その国の最高の武人であり短槍の名手であった人でした。
そこからバルサはジグロと二人きりの国から命を狙われる影の人生、用心棒稼業の人生を歩むことになります。
それまではジグロは国の最高の武将であり、王と共に国の運命を左右する儀式にも選ばれた、英雄の中の英雄でした。
しかしそのことで汚名を着させられ追手に追われ続けることに、しかも追手は命をわかちあってきた仲間たち。
しかしバルサの命を守るために仲間たちを撃たねばなりません。
更に飢えと貧しさも二人を追い込み、そんな中で彼らは親子以上に深い絆で結ばれます。
そしてジグロはバルサが独り立ちした頃、
病で亡くなり、バルサは用心棒稼業中にチャグム王子と出会うのです。
(ここから1巻目)
チャグムという子どもを守ることで、
養い親であるジグロに養われていた自分自身を思い出したバルサは、
もう一度自分の原点と決着をつけようと故郷の土を踏む、そこから第2巻は始まります。
故郷である貧しい山岳地帯の祖国がどうやって生きて行く為の作物を手に入れているかというと山奥からとれる非常に貴重な美しい宝石が唯一の輸出品の対価からのみ。
それを元に他国から作物を得、国民の命を支えています。
しかしその宝石は発掘作業によって得ているのではなく、
15年ぐらいの間隔で行われる秘儀の中で
王と選ばれた武人のみが山奥の洞窟にて、
山の王、と呼ばれる者と対峙することで得られるものでした。
またその秘儀では山の王を守るヒョウル(闇の守り人)という化け物を倒す、という試練があったのです。
だからこそ、この国の英雄は武人であり、この儀式を伝え継ぐ者。バルサの養い親であるジグロはそれを継ぐ者でもあったのです。
儀式がこの物語のクライマックス。
実はヒョウル(闇の守り人)とは、
過去の儀式で戦いを挑んだ武人が死んだ後、実態を伴った魂となって山の底に沈んだ姿だったのです。
人々が欲にかられ、宝石を必要以上に掘り起こさないために山の王を守るため代々そうやって死してなお、闇に潜み守ってきたのです。
つまり今回の儀式でヒョウル(闇の守り人)となっていたのは前回の儀式で戦いを挑んだジグロと、ジグロに殺された武人たち。
本来バルサがそこの武人に選ばれるはずはないのですが運命に導かれ、その儀式で戦う選ばれた武人になることになります。
つまり養い親であるジグロとバルサの闘い。親と子の対峙とも言えましょう。
※ここからが心理療法と同じような場面です※
バルサは養い親であったジグロと命をかけて戦います。
故郷も、地位も、名誉も、一族の誉も、命も、自分のすべて捨ててバルサを守ってきたジグロ。
そのジグロと槍を重ねるごとにジグロの本心が初めてバルサに伝わってきます。
お前さえいなければ・・・!!
そう、バルサさえいなければ、
最高の武人として名誉も地位もほしいままだったジグロ。
飢え苦しみ、刺客となった生涯を誓い合った大切な友を殺す必要もなかった…
そしてバルサも負けじと叫びます。
助けてくれと誰が言った!!
5歳の何もわからない
わたしはそんなこと頼んでいない!!
お互いの本心を力の限り戦いの中で
ぶつけ合った2人。
刹那、バルサは悟ったようにジグロの槍を自分の胸にすべて投げ出します。
養われた子が、親であるジグロを受け入れて母のようになる瞬間でした…
ジグロは力いっぱいバルサを刺し、
想いを遂げバルサはそれを全身で受け止めるのです。
その瞬間、ジグロと他の武人たちの魂は、
山の王と溶け合い、国民が待ち望んでいた宝石を遺し、魂は天に還っていくのです。
天に還る瞬間、そこにいた人すべてが
ヒョウルたちの魂の想いを感じます。
生きていた頃の喜び、苦しみ、そして愛…
その中でバルサはジグロがくれた胸の痛みを噛みしめながら同時に、
飢えと苦しみの中、雨宿りをした軒下で、懸命にバルサに雨粒がかからないように守ってくれていたジグロのぬくもりも全身で感じます。
そしてジグロへの言葉にならない想いを大声で叫び、泣き、出し切るのです。
彼女の想いも、すべて。
※心理療法と終了※
囚われから抜け出て前に進むために。
過去を思い出に変えるために。
※※※
あらすじ終わり
ジグロはバルサを愛していたと思います、
それこそ命をかけて。
でもその愛と同じぐらい自分にとって足枷であったのも事実でしょう。
赤ちゃんを抱いたお母さんなら
可愛い、けど…!と、24時間全てを捧げて育児をしている最中にふと感じた瞬間もあったことでしょう。
思春期、自分を模索する最中に
自分の生きている意味が見出せなくて
なんでわたし、おれを産んだんだ
頼んでない!と親に八つ当たりしたことがあったでしょう。
本当の本心であったなら、
マイナスの感情すらも
納得し合えるのです。
嘘で固めた耳障りの良い言葉を
言われた方が苦しい。
本音と本音を出し合った先に、
過去に引きずられることなく
生きていく活力が蘇ってくるのです。
こちらはファンタジーだから、
死者と対峙出来るじゃないの?
と思われるかもしれませんが、
脳とは不思議なものでまた潜在意識には
時間の概念がありません。
なので、我々心理セラピストが誘導させて頂く中で、
あなたも去って行ってしまった人々と
再び会話をすることが出来るのです。
今一度聞きたかった声はありませんか。
あの時、あの人は何を思っていたのだろう、そんな想いを。
引きずって前に進みにくくなっている方がいたらご相談ください。
その時の想いを、あなたの中の宝石へと変える旅に一緒に出ることにいたしましょう。
